杉村三郎シリーズの新刊『昨日がなければ明日もない』を先日読みました。
帯にある『杉村三郎vsちょっと困った女たち』の文言通り、杉村三郎が「ちょっと困った女たち」に関わって事件を解決していきます。
続きが気になって仕方なく、夕飯の支度に支障が出るほどでした(笑)
さすが宮部みゆき!!
ステイホームも悪いことだけじゃない
2020年3月。
コロナ感染の拡大を受けて、急遽一斉休校になりました。
突然のお知らせに慌てたことはもちろん、小学校へも行けずお友達とも遊べない子どもたちのストレスや不安も日々募っていきました。
模索しながらの自粛生活の中、出来なくなったことも多いけれど楽しめたこともありました。そのうちのひとつが読書です。
ステイホーム期間中、我が家では読書の時間を取り入れました。
ゲーム三昧の子どもたちに少しでも本を読んでもらう目的で始めた「読書時間」。
読書用BGM(YouTubeから選曲)をバックに30分間、各々好きな本を読む時間としました。
でも実は・・・この時間を1日の一番の楽しみにしていたのは私です(笑)
子どもの世話や家事、在宅での仕事にバタバタする日々の中、ゆっくり本を読む時間はなかなか取れずにいました。自粛期間中、堂々と読書に没頭できて幸せでした。
読書時間の中で久しぶりにたくさん本を読めたので、オススメの本をレビューしようと思います。
あらすじ
『希望荘』以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ第5弾となります。中篇3本を収録する本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。
収録作品――あらすじ――
「絶対零度」……杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、1ヵ月以上も面会ができまいままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。
「華燭」……杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。
「昨日がなければ明日もない」……事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。「子供の命がかかっている」問題だという。美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。
※あらすじ引用先:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163909301
『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき | 単行本 – 文藝春秋BOOKS
読み終えた感想
杉村三郎シリーズはこれで5作目になります。
『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』『希望荘』そして『昨日がなければ明日もない』です。
ペテロの葬列までは以前ドラマでも実写化されており、主役の杉村三郎役を小泉孝太郎さんが演じていました。「イメージとピッタリ!」と思ったことを覚えています。
『昨日がなければ明日もない』を読み終わっての第一声は「やっぱり杉村三郎シリーズは面白い!」
シリーズの中で唯一読んでいなかったペテロの葬列を慌てて買いに行きました。
他の小説も読むのに、どうして杉村三郎シリーズに自分がハマってしまうのか・・・
それはやはり、主人公の杉村三郎が魅力的だからだと思います。
杉村三郎はとんでもないキレ者でもなければ、カリスマ的な人気があるわけでもないけれど、一番の魅力は「人の良さ」ではないかと。品があり、ユーモアもある。でも杉村三郎を語る上で欠かせないのが、「人の良さ」です。
宮部みゆきは、杉村三郎シリーズ誕生のきっかけについて問われた際に自信が影響を受けた作品を挙げてこう答えています。
「のんびりとした人のいい私立探偵が主人公の物語を、自分もいつか書きたいと思っていた」
後味が悪くなるような、胸糞悪くなるような事件も、杉村三郎に関わらせることによって嫌な読後感がなくなる・・・といった効果もあるのかもしれません。
杉村三郎が関わる事件は「大きな悪」ではなく、身近な「悪意」によって起こる事件が多いのも特徴です。家庭内、友人関係、会社の中で生まれた身近な「悪意」。
その「悪意」によって壊された人生を杉村三郎は目撃していくことになります。
人よりも「事件慣れ」していた会社人だった杉村三郎が私立探偵となり、本格的に事件と関わっていくことになった「希望荘」と「昨日がなければ明日もない」の2刊。
今後もシリーズが続いていくことを切に願いつつ、杉村三郎の活躍を待ちたいと思います。
一周回ってやっぱり宮部みゆきに戻る
小さい頃から読書が好きでしたが、一番好きなのはミステリー小説でした。
現実にはないドキドキ感、次はどうなるんだろう、とページをめくる手が止まらない感じにハマっていきました。
20代の頃はお気に入りの作家の作品ばかりを読むようなスタイルで、30代になって、色々な作家の作品を読むようになりました。
テレビで紹介されたもの、「このミス」で良い評価だったものはもちろん、直接書店へ行き書店員さんが書くポップを参考に本を選ぶこともよくありました。
新たにお気に入りの作家が見つかることもありましたが、40代になった今、やっぱり20代に面白いと思っていた作家に戻りつつあります。
特に宮部みゆきさんは大好きな作家さんです。
「レベル7」で初めて宮部さんの本を読み、魅了されました。
その後、「模倣犯」でやっぱりこの人の作品は大好きだと確信。
次男の妊娠中、長期入院で読破した「ソロモンの偽証」。分厚い単行本が3冊・・・久しぶりの読書は思わぬ長期戦になりましたが、読み終えた後は色々な感情が押し寄せて泣けました。
「ソロモンの偽証、どれだけ面白かったのか誰かに伝えたい!」と思っていましたが、当時SNSなど全くやっていなかった私は伝える術もなく・・・
その後、映画化され話題になったのは皆さんがご存知のとおりです。私が心配しなくても本当に面白いものは世に広まっていくんだ・・・と納得した瞬間でした(笑)
20代の頃の私がハマり、一周回って40代でまたハマっている宮部みゆき作品。ご興味がありましたら、ぜひ読んでみていただけると嬉しいです!