【オススメ読書】『緑の庭で寝ころんで』 宮下奈都

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エッセイをほとんど読むことのなかった私がどハマリした1冊です。「羊と鋼の森」の作者ならきっと面白いに違いない!と図書館で借りました。ゆっくり1話ずつ噛みしめながら読み、読了。貸出期間を延長してまでじっくり読みたかった1冊です。「作家・宮下奈都」の顔だけではなく、「母・宮下奈都」の顔が垣間見え家族のエピソードに笑ったり涙したり、温かい気持ちを運んでくれるエッセイでした。一気に宮下奈都ファンになった私が感想をレビューしたいと思います!

 

あらすじ

 

 

ふるさと福井で、北海道の大自然の中で、のびやかに成長する三人の子どもたち。

その姿を作家として、母親として見つめ、あたたかく瑞々しい筆致で紡いだ「緑の庭の子どもたち」(月刊情報誌「fu」連載)4年分を完全収録。

ほかに、読書日記、自作解説ほか、宮下ワールドの原風景を味わえるエッセイ61編、掌編小説や音楽劇原作など、単行本初収録の創作5編も収載。

 

本屋大賞『羊と鋼の森』誕生前夜から受賞へ。そしてその後も変りなくつづく、愛する家族とのかけがえのない日々。著者充実の4年間のあゆみを堪能できる、宝箱のようなエッセイ集!

地元の新聞社が月に一度発行する情報誌『fu』に、2013年からエッセイを連載してきた。「緑の庭の子どもたち」という、子どもたちがテーマの文章だ。

本になるとは思っていなかったので、ずいぶんリラックスして書いている。寝ころんで読んでもらえるくらいでちょうどいいなと思う。読んでくれた方の夢も、きっといつのまにか叶っているに違いない。

これはしあわせのエッセイ集なのだ。 (「まえがき」より)

 

※あらすじ引用先:緑の庭で寝ころんで|実業之日本社
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53717-7

読んだ感想

 

「寝ころんで読んでもらえるくらいでちょうどいい」とまえがきに書いてあったので、リラックスモードで読み始めました。しかし結局はいつものように机に座り、お仕事モードに。寝ころんで読むには勿体ない、ついメモしておきたくなるような素敵な言葉が溢れていました。

北海道トムラウシで1年間過ごした生活やお子さんの成長、家族の様子が綴られています。それは時にほっこりする内容だったり、じんわり涙する内容だったり。

お子さんの成長の様子は、立派な教育論や英才教育的なエピソードではなく、等身大のお母さんの子育てそのもの。おおらかにのびのびと子育てする様子に「お母さんとしての宮下さんも素敵な方だな」と一気にファンになりました。

 

進学と同時に家を出るお子さんについて書かれたエピソードでも、こう綴っていました。

『小説が愛されて映画として新しく歩き始めるように、息子も新しく歩きはじめようとしている。自分の人生を一歩踏み出そうとしている。もしも途中でつまづくことがあっても、ふりかえったときに安心できるように、愛されているとわかるように、私はここにいてそっと手を振っていようと思う。』

 

宮下さんの息子さんと我が子がリンクしてしまい、涙腺が崩壊。

我が子はまだ小学生ですが、林間学校に行くのすら心配するような私です。こんな風にそっと見守ることができるのか自信はないですが、子どもを信じて「あなたには帰ってくる場所があるんだよ」と見送る姿がとても眩しく映りました。

 

もうひとつ印象に残った話があります。

宮下さんがイベントで熱心なピアニストさんに会った時のエピソード。

「彼女はものすごく頑張り屋さんですね」と言った宮下さんに対し、音楽監督はこう言ったそうです。

「彼女は素晴らしいピアニストです。でもね、宮下さん、がんばるのは当然でしょう。みんな、頑張って頑張って、大事なのはそこから先だからね」

その言葉に身が引き締まる思いがした、と綴り、最後にこうまとめています。

『がんばるのが恥ずかしいとか、努力する姿を見せるのはかっこわるいとか、そんなことを思って手を抜いていたら、いつか行きたい場所に永遠にたどり着けないかもしれない。』

 

この一言に完全にノックアウト!!宮下さん、カッコよすぎでしょう。本屋大賞まで受賞した人が、こんなこと言うなんて。そういう世界なんだ、厳しい世界だな。私が憧れている物書きの世界は、こんな世界なんだ。

宮下さんがそう思うのなら、私なんてまだまだ、まだまだまだ。もっと書いて書いて、努力して努力しなければいけないんだと鼓舞されました。

お母さんとしての寛大さだけでなく、仕事に対する熱意まで!もう完全に憧れの存在です。

 

宮下奈都さんと本屋大賞

 

 

2016年本屋大賞を受賞した前後のエピソードも掲載されていました。

トムラウシに行かなければあの物語は書けなかった、と書かれていました。雄大で圧倒的な自然の中で、「羊と鋼の森」が描かれたのなら、あの森の迫力も納得です。

羊と鋼の森は主人公の成長が物語の魅力。お子さんの成長を大事に見守っている宮下さんだからこそ、主人公の成長を丁寧に温かく描けたのだと、これまた納得しました。

羊と鋼の森を書けて幸せだった、書いているあいだ中楽しかった、という表現が随所に出てきます。

やはり「好き」がたくさん詰まったものは、人の心に響く、書いている本人が楽しいと思えるものは読者の心を掴むのだと思うと勇気が沸きました。私も書きたい。もっともっと書いて、伝えたい。

 

こうして読了後の感想を書いていると改めて思うことがあります。

仕事のことや家庭のこと、とにかく共感できる内容が多く、でもその先に絶対に自分では思いつかないような素敵なフレーズや力強い言葉がこの本には並んでいる。これがプロの作家なのだと突きつけられたような気がしました。言葉が心を揺さぶり、深く広がっていく。

「泣きながら一気に読みました!」というジャンルの本ではないのでしょうが、私にとっては泣ける本になりました。素晴らしかった!

素晴らしい言葉、エピソードがたくさんあった中で一番お気に入りの一節を紹介して終わりたいと思います。

自分にも息子たちにも伝えたい言葉です。私も精一杯生きていこうと思います。

 

『人生には、ときに逃げなければならないようなことが起きるけども、びっくりするほど素敵なことも、また、起きる。そこを信じられるかどうかが、生きのびる鍵なのではないか』

 

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