【思い出の一冊】『よるくま』 酒井 駒子

読書
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「あなたの一番心に残っている絵本は何ですか?」

先日回答したアンケート。

子どもたちが小さかった頃から、よく絵本を読み聞かせしてきました。

話題になっている絵本、自分が子どもの頃に好きだった絵本。一緒に笑ったり、時には読んでいる私のほうが涙ぐんだりしながら……

お気に入りの絵本はたくさんありますが、間違いなく一番心に残っている一冊です。

仕事と育児の両立がうまくできず悩んでいた頃、私を救ってくれた絵本。当時を思い出しながらエッセイ風にご紹介します!

 

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『おかあさんは?おかあさんは?』

お母さんを探して泣き出した「よるくま」の姿が、朝の息子の姿と重なる。

 

「ママ行かないで!」

保育園でのお別れの時間は、いつも胸が苦しい。

泣き叫ぶ息子の姿を見ないように、振り返らずに私は職場へ向かう。せめて仕事が終わったらたくさん遊んであげたい、話を聞いてあげたい、と思うのに、家事や翌日の準備に追われ忙しなく一日が終わる。

そんな日々の中、布団で絵本を読み聞かせする時間はホッと一息つける癒しの時間だった。

息子の一番のお気に入りは「よるくま」の絵本。

よるみたいに真っ黒な熊の子が、おかあさんを探しに出かける物語だ。

あちこち探してもお母さんは見つからず、よるくまはとうとう泣き出してしまう。無事に再会できたお母さんは、魚釣りの仕事をしているところだった。この魚を売ったお金で何をしようか、と話しながら家路につく親子。

 

「あぁ、このお母さんは私だな」と思う。

仕事をしていても電車に乗っていても、ずっと息子のことを考えている。

もう泣き止んだかな。お友達と楽しく遊んでいるかな。給食ちゃんと食べたかな。週末は何をして遊ぼうかな。

『きょうはこのままだっこしてかえろう』

よるくまのお母さんがよるくまを抱っこして家に帰ったように、私も布団の中で息子を抱きしめる。

息子のぬくもりを感じると、疲れた体も心もじんわり温かくなった。くすぐったくて温かい、至福の時間。

「一日、保育園を頑張ったご褒美に抱っこして寝ようか」

毎晩繰り返した言葉。本当は息子へではなく、自分へのご褒美だったように思う。

 

それから月日が経ち、「ママ行かないで!」と泣いていた息子は11歳になった。

日に日に目線の高さが近づく。もう抱っこはしないし、一緒にも寝ない。手がかからなくなった今でも、本棚の隅におかれたこの絵本を見るたび、あの頃感じた切なく温かい気持ちが蘇る。

 

新米ママだった私と、泣き虫だった息子。

いつも枕元にあった一冊は、今も私たちを見守っている。

 

 

子育てを頑張る全てのお父さん、お母さんにオススメしたい一冊。寝る前に、温かい気持ちで一日を終えることができる優しい絵本です。よかったらぜひ読んでみてくださいね★

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