久しぶりに何も予定のない休日。子どもたちは各々、友達と遊びに行ってしまった。サイズアウトした子ども服でも整理しようかと思いつき、洋服ダンスと向き合う。
「これはあまり着てないから甥っ子にあげよう」要る、要らない、の選別作業が流れに乗ってきた頃、タンスの奥の青いシャツに目が留まる。青いシャツに白い縁取り、背中には大きな数字が書かれた息子のユニフォーム。
「こんな小さいの着てたんだ」バサっと広げたユニフォームから、懐かしい記憶が蘇る。
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「もうサッカー辞めたい」
息子の通うサッカースクールでは、進級テストに合格するとワッペンがもらえる。1つ目のワッペンがなかなかもらえなかった息子は、すっかりやる気を失っていた。
「もう少しだけ頑張ってみたら」と励ましつつ、スクールの日以外にも公園で練習を重ねる日々。足に痣ができて痛がったり、悔しさに涙を滲ませたりすることもあった。
初めてワッペンを獲得できた日のこと。
「やったぜ!」という頼もしい顔、しっかりと握りしめられたワッペンを、私は今でも覚えている。思わず涙が出そうになり、慌てて笑顔を作って一緒に喜んだ。
めでたし、めでたし。で話は終わらない。
ワッペンはユニフォームに縫い付けることになっているのだが……、さぁ、困った。
私は裁縫が全く出来ない。
幼稚園グッズも、ボタン付けすら母に丸投げしてきた。母が出来ないときは、「手作り風グッズ」を購入して乗り越えてきた。針も糸も使わずここまで来てしまったのだ。しかし、あの日は、あまりの嬉しさに自分で縫い付けてみようという気になった。
まつり縫いって何だ?玉留めってどうやるんだっけ?
ほんの小さなワッペンと格闘すること1時間。何度も縫い直したワッペンはガタガタ。
さすがにこれでは息子に申し訳ないと思い、「今度、おばあちゃんに綺麗に縫い直してもらおうね」と言ったところ、「このままでいいよ。」と予想外の返答が。
「ママが一生懸命付けてくれたから、俺も一生懸命頑張る。」
あれから5年。ユニフォームはとっくに大きなサイズに買い替え、それもまた窮屈になりつつある。5年間で何度も付けたワッペン。私の腕前もなんとか見られる程度には成長した。
小さかった息子の、小さなユニフォーム。
ガタガタのワッペンだらけのユニフォーム。
ここには、息子の優しさや頑張る姿が詰まっている。
息子が成長し、やがて親元を離れる日がきてもこのユニフォームだけは私の側に置いておこう。